「中華ブロックチェーン」と世界で最も重要な香港の取引所の行方

本稿はコラムです。

香港の規制当局はどう動くか

香港証券先物委員会(SFC)は9日、公式サイトでステートメントを発表し、仮想通貨取引所の利用やICOへ投資する際のリスクに関して投資家の警戒を促しました。

ステートメントでは以下のように語られています。

我々は今後も市場の監視を続け、必要に応じて取り締まりを行う。市場のプロフェッショナルは、詐欺行為や疑わしい資金調達を防ぐために適切なゲートキーパーとしての役割を果たし、法令遵守を確実にしようとする我々の試みの支援を要請する、と説明しています。

中国への外国直接投資(FDI)は香港を経由する傾向が強く、同様に香港は本土中国の富裕層の資産の置き場所です。その香港にあるBinanceという仮想通貨取引所の戦略性は極めて高いのです。そして中華ブロックチェーンは独自の進化を辿りそうです。中国以外の地域への投資に関しても香港を経由するケースは多いようです。

World Investment Report 2017

同様に香港は本土中国の富裕層の資産の置き場所という意味合いがあります。暗号通貨は彼らの資本移転を容易にします。共産党の気分次第で資産を失う富裕層の危機感はすごいもので、あらゆるお金を可視化したい中国政府とのせめぎ合いが続くと予測できます。特にモネロ、ダッシュ、Zcash等の匿名通貨は資金逃避という用途に「最適」なので、将来的には厳しい視線が注がれるでしょう。

Binanceの躍進と危機

今週はBinance創業者のForbes記事が話題になりました。

世界最大の仮想通貨取引所「バイナンス」創業者、41歳の人生

一部抜粋し組み合わせました。

ジャオ・チャンポン(趙長鵬、Changpeng Zhao)の個人資産はフィアット換算で11億〜20億ドルと算定された。Binanceは1秒間に140万件の取引(トランザクション)を処理し、ユーザー数は600万人、世界最大の取引所になった。

ソフトウェアエンジニアとして東京証券取引所やニューヨーク証券取引所のシステム構築を行った後、ブルームバーグのTradebookのソフトウェア開発部門に勤務した。その後、27歳でニュージャージーやロンドン、東京のチームのマネージャー職に昇進した彼は2005年に退職。上海で証券取引所向けに超高速取引システムを提供する「フュージョン・システムズ」の設立パートナーを務めた。

Binanceは瞬く間に世界の取引所でトップクラスの取引量を誇るようになりました。それはBinanceが提供できる取引の処理速度が寄与したと考えられます。システムトレード等を行う暗号通貨投資家がBinanceのパフォーマンスに魅了されているからです。Binanceは素晴らしいアフィリエイト条件で日本人ブロガーを魅了しました。このブログにより集客された投資初心者が年初に賞味期限が切れたお祭り騒ぎで、厳しい結果に直面したと考えられます。私はお祭り騒ぎのさなかにこの記事でそのリスクを指摘しました。

最初に指摘したSFCの規制がより厳しくなると、Binanceは香港から軸足を移さざるを得ません。ライバルの香港の取引所Bitfinexはテザー問題で米国の当局から調査を受けており、状況次第では香港の当局からも厳しい監督を受ける可能性があります。

Binanceは一時日本進出を企図していたようでしたが、Forbes記事にもある通りそのプランをやめ台湾に力を注いでいるそうです。コインチェックのクラック以降、金融庁のみなし仮想通貨交換業者への態度が変わっており、許認可取得や運営のハードルが上がっていると私は推測します。

日本にBinanceを呼び寄せるべきだった

私は、日本としては暗号通貨に慣用かつビジネスフレンドリーな法制が敷かれるべきではないかと考えています。中国という共産党が支配する巨大国家の性質上、近接する土地に金融等の機能が集約された島が必要になる、という状況は中国経済が膨れ上がるにつれてますますその傾向を高めていくはずです。Binanceは台湾を選びましたが、こういう企業が日本を選ぶようにすることこそ、繁栄をもたらすのではないか、と思います。

中華系の人々が日本を訪れ、取引所からキャッシュアウトした日本円を日本で使ったり、巨額すぎて取引所が使えない場合は、相対取引やダークプールを利用したりというユースケースが想定できるかもしれません。これらは間違いなくお台場に作ろうとしているカジノよりも大きな利益を日本にもたらすと考えられます。

Chinese Blockchain

さて、中国のブロックチェーンはどのようなものになるのか?

インターネットと同様、中国は管理された独自のブロックチェーンへと舵を切っていくと考えられます。金融機関や国家が「支配」している領域をマシンナイズする本物のパブリックチェーンであるビットコイン、イーサリアムには厳しい状況です。

むしろNEOのような企業が開発をするエンタープライズITの領域に成長機会があるかもしれません。NEOに関してはこの記事と動画でざっくり説明しています。

最初からDelegated Byzantine Fault Tolerance (dBFT) を採用しているのが強みです。EthereumがPoWからPoSに移行しようとしているいま、ものすごい議論が巻き起こっています。NEOは非中央集権のプロトコルに拘りを持っていないようで、自らチェーンに一定のガバナンスをもつことで、パブリックチェーンのデメリットを解決しています。中国企業との提携が広がり、強力かつ潤沢なエコノミーに裏打ちされたコミュニティが育てば、開発力は後からついてくるのではないか。中国の「状況」を鑑みると、この発展の仕方が現実的かと考えられます。

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